2026年第1四半期、世界直接不動産取引額は前年同期比18%増の2,160億ドルに達し、公開REIT市場も堅調なリターンを示した。ただし、イラン紛争による地政学リスクと高止まりする金利環境が、回復の持続性に不確実性をもたらしている。特に欧州市場では長期金利の制約が続き、データセンターや住宅系セクターへの資本集中が顕著だ。

世界不動産市場、取引額回復も地政学リスクが影を落とす

JLLが2026年5月5日に発表したレポートによると、2026年第1四半期の世界直接不動産取引額は2,160億ドル、前年同期比18%増だ。アジア太平洋地域では投資額が前年同期比31%増を記録し、日本とシンガポールが牽引した。米州も25%増と堅調な伸びを見せた一方、EMEA地域は2%減となった。クロスボーダー投資は550億ドルと37%増加し、2022年以来の最高水準だ。市場の流動性は改善している。

ただし、JLLはイラン紛争の経済的影響が依然として不確実であり、サプライチェーンの混乱やインフラへの損害が長期化するリスクを指摘している。地政学的な緊張が回復基調に新たなリスク要因として加わっている。

REIT市場の堅調なリターンと金利環境の制約

公開REIT市場では、Nareitのデータによると、2026年2月時点で全エクイティREITの年初来総リターンが10.5%、モーゲージREITが1.9%と堅調だ。FTSE EPRA Nareit Developed Indexも11.2%上昇し、S&P United States REIT Indexは2026年6月2日時点で1年リターンが10.78%となっている。不動産市場は金利高止まりの環境下でも一定の回復力を示している。

この回復は金利低下期待のみに依存していない。CBREの2026年米商業不動産市場見通しでは、投資活動が前年比16%増の5,620億ドルと予測される一方、キャップレートの低下幅は多くの物件タイプで5〜15bpに留まる。高止まりする長期金利が不動産評価に引き続き影響を与え、リターンは主にインカムゲインが牽引する構図だ。インフレ再加速の懸念がFRBの金融政策に影響し、借入コストの急激な低下を抑制している。

指標最新値含意
世界直接不動産取引額 (2026年第1四半期)2,160億ドル、前年比18%増市場流動性の回復
全エクイティREIT総リターン (2026年2月時点)年初来10.5%公開市場の先行反発
S&P United States REIT Index (2026年6月2日)1年リターン10.78%米国REIT市場の堅調さ
イラン紛争経済的影響は不確実地政学リスクの増大

欧州市場とデータセンター:資本配分の新たな焦点

CBREの欧州不動産市場見通しでは、長期金利の高止まりが続き、利回り低下によるリターン拡大は限定的だ。欧州市場では、住宅系、学生住宅、データセンターといった供給不足が明確で需要が堅調なセクターへの資本配分が加速している。データセンターはAI需要の急増により空室率が低下しているものの、電力接続期間や電力価格が新たな制約要因として浮上しており、エネルギー価格の変動がREITの運営コストとテナント賃料の双方に波及する。

2026年後半のグローバル不動産市場は、取引額の回復を維持しつつも地政学リスクと高止まりする金利環境という二重の制約に直面する。賃料成長の持続性、資金調達条件の改善、供給制約を持つ資産クラスへの選別投資——この3点が投資判断の軸になる。

出典:JLL (2026年5月5日), Nareit (2026年), S&P Global (2026年6月2日), CBRE (2026年1月14日), CBRE Europe (2026年1月13日)

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