5月時点で、イーサリアムはGlamsterdamとHegotáを軸にL1拡張、ネイティブAA、耐量子対応を進めている。同時にDeFiではTVL偏重から収益密度と資本効率を重視する評価軸への移行が進む。
イーサリアム開発課題
イーサリアム財団が2026年2月に示したプロトコル優先事項では、開発領域は「Scale」「Improve UX」「Harden the L1」の3トラックに整理されています。2026年5月時点で焦点となっているのは、レイヤー1のガス上限を1億以上へ引き上げる作業、Glamsterdamアップグレードに含まれるスケーリング要素、blobパラメータの追加拡張、zkEVM attester clientの本番準備です。
この変更は、単なる処理能力の拡大ではありません。L1の確認速度、L2間の相互運用性、blob供給量が同時に改善される場合、ロールアップ上の取引コストと決済遅延は低下し、DeFi、決済、オンチェーン証券化の実務利用に直接影響します。特に、より短い決済時間と信頼最小化されたクロスL2連携は、機関投資家がオンチェーン市場を運用対象として評価する際の前提条件になります。
ネイティブAAと耐量子対応が持つ実務上の意味
ユーザー体験の領域では、EIP-7701やEIP-8141などの提案を通じて、スマートアカウントのロジックをイーサリアムに直接組み込む方向が示されています。ネイティブアカウント抽象化は、ウォレットの復旧、手数料支払いの柔軟化、複数署名、法人向け権限管理をプロトコル層に近い場所で扱いやすくする設計思想です。
この取り組みは、耐量子暗号への移行経路とも関係します。Yahoo Financeが報じたイーサリアム財団の説明では、ネイティブAAはECDSAベースの認証から移行するための自然な経路になり得るとされています。金融機関が長期保有資産や決済インフラをオンチェーン化する場合、署名方式と鍵管理の将来耐性は、価格変動よりも重要なオペレーショナルリスクになります。
DeFi市場で進むTVL偏重からの離脱
DeFi市場では、2026年5月時点で評価指標の重心がTVLから資本効率へ移っています。FinTech Weeklyは2026年4月、主要プロトコルに預け入れられた流動性の83%から95%が任意の時点で未使用となり、120億ドル超のDeFi流動性が実質的に休眠しているとの推計を示しました。これは、TVLが「存在する資本量」を示す一方で、「収益を生むために使われている資本量」を示さないという構造的な問題を浮き彫りにしています。
その代替指標として重要性を増しているのが、収益密度です。収益密度は、プロトコルが生み出す実収益を、その収益生成に必要な稼働資本で割り引いて評価する考え方です。2億ドルのアクティブ流動性で年間1,000万ドルの手数料を生む市場と、20億ドルの預かり資産で年間300万ドルの手数料にとどまる市場は、TVLでは後者が大きく見えますが、資本市場の観点では前者の方が効率的です。
規制成熟が資本効率を要求する局面
EUではMiCAの適用が進み、暗号資産サービス事業者にはライセンス、開示、ガバナンス、顧客保護に関する要件が課されています。2026年7月1日の移行期限を前に、EU域内で事業を継続する企業は、規制対応を営業上の選択肢ではなく市場参加の条件として扱う必要があります。米国でもCLARITY Actを巡る議論が続いており、デジタル資産を証券またはコモディティとしてどう扱うかは、取引所、カストディ、DeFiフロントエンドの設計に影響します。
規制が成熟すると、DeFiプロトコルは高いTVLを掲げるだけでは不十分になります。監査可能な資金フロー、利用率、清算メカニズム、収益源の持続性を説明できるプロトコルが、機関投資家の審査対象になります。5月時点の市場構造を見る限り、イーサリアムの技術ロードマップとDeFiの資本効率重視は別々のテーマではありません。L1とL2の実行環境が改善されるほど、プロトコルは資本をどれだけ効率的に稼働させているかを、より厳密に比較されることになります。
出典:Yahoo Finance (2026年2月19日), FinTech Weekly (2026年4月16日), Binance Square (2026年4月26日), The Future of Money (2026年Q1)
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