グローバル不動産市場は、金利の高止まりと地政学リスクの中で「選別的な回復」の局面を迎えている。キャップレートの拡大は一服し、インカム成長力と質の高い資産への資金回帰が鮮明化。特に物流・データセンターやアジア太平洋地域のオフィス市場が投資家の注目を集めている。

金利環境とキャップレートの構造的変化

今年初頭のグローバル商業不動産(CRE)市場は、インフレ懸念の再燃と高止まりする金利環境下で、新たな価格発見のフェーズに移行している。過去数年間の金利上昇に伴う不動産価値の再評価は終盤に近づいており、キャップレートの拡大ペースは世界的に鈍化傾向にある。しかし、ベース金利が高水準で推移しているため、広範なキャップレートの低下(価格上昇)は見込みにくい状況だ。このようなマクロ環境下では、1970年代のインフレ期と同様に、不動産投資のリターンは「バリュエーションの拡大」から「インカムの成長」へとその源泉をシフトさせている。投資家は、強固なテナント需要と価格決定力(賃料引き上げ能力)を持つ優良資産への選別姿勢を強めており、資産の質による価格の二極化が進行している。

セクター別・地域別の投資資金フロー

セクター別に見ると、サプライチェーンの再構築やAIブームを背景に、物流施設やデータセンターへの投資意欲が極めて高い。また、住宅セクター(特に賃貸住宅や学生向け住宅)も、供給制約と手頃な価格の住宅不足を背景に堅調なファンダメンタルズを維持している。一方でオフィス市場は、米国の一部で最高賃料を更新する優良物件があるものの、全体としてはハイブリッドワークの定着やESG対応の設備投資負担により、依然として回復にばらつきが見られる。

地域別では、アジア太平洋(APAC)地域へのクロスボーダー投資が顕著な回復を示している。2025年の同地域への投資額は前年比29%増となり、特に東京は低い借入コストと安定したインカムを背景に、7年連続で最も選好される投資先となっている。シドニーやシンガポールでも、オフィス市場の稼働率の高さと新規供給の限定的な状況が賃料成長を支えており、投資家の関心を集めている。欧州(EMEA)市場も、地政学的な不確実性にもかかわらず、インカムの耐久性と長期的な成長ポテンシャルを提供するコア市場への資金流入が続いている。

出典:Cushman & Wakefield (2026年4月6日), Morgan Stanley (2026年4月8日), Hines (2026年4月8日), World Property Journal (2026年4月30日)

免責事項:本記事は情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
サムネイル:AI生成画像