今年の世界の鉄鋼需要は微増に留まるものの、中国の不動産市場の調整が底打ちに近づき、インドが主要な成長牽引役となる見通しです。大手鉱山会社は堅調な供給を維持する一方で、世界的な供給過剰リスクが市場の課題として浮上しています。グリーンスチールへの移行は長期的な産業構造変革を促しますが、短期的な需給バランスは地域差が顕著です。
世界鉄鋼需要の緩やかな回復と地域差
ワールド・スチール・アソシエーション(WSA)の2026年4月短期予測(SRO)によると、2026年の世界の鉄鋼需要は0.3%増の1,724百万トンと予測されています。これは2027年には2.2%増の1,762百万トンへと加速する見通しですが、地域によってその成長軌道は大きく異なります[1]。
特に、中国の鉄鋼需要は2026年に-1.5%と減少幅が縮小し、不動産市場の調整が底打ちに近づく中で、インフラ投資が需要を下支えすると見られています。しかし、2027年もほぼ横ばいの需要が予測されており、かつての成長エンジンとしての役割は限定的になるでしょう[1]。
対照的に、インドは世界の鉄鋼市場における最大の成長エンジンとして台頭しています。2026年には7.4%増、2027年には9.2%増という高い成長率が予測されており、これはインフラ建設と活況を呈する自動車部門によって牽引されています[1]。先進国市場も緩やかな回復基調にあり、米国は1.7%増、EU+UKは1.3%増と予測され、政策支援による民間投資やインフラ支出が回復を後押ししています[1]。
大手鉱山会社の供給戦略と過剰能力リスク
大手鉱山会社は、堅調な鉄鉱石供給を維持しています。リオ・ティントは2026年の鉄鉱石販売ガイダンスを343百万トンから366百万トンと再確認し、2026年第1四半期の生産量は前年比12%増と好調を維持しています[2][3]。BHPも銅、鉄鉱石、カリウムの主要3分野で2026年に積極的な供給戦略を展開する姿勢を示しています[4]。
しかし、供給サイドには課題も存在します。経済協力開発機構(OECD)は、2026年以降、世界の鉄鋼過剰能力が拡大し、2028年には745百万トンに達する可能性があると警告しており、これは現在のOECD諸国の総生産量を上回る規模です[5][6]。この過剰能力は、市場価格に下落圧力をかけ、鉄鋼メーカーの収益性を圧迫する要因となる可能性があります。
グリーンスチールへの移行と産業構造の変化
鉄鋼産業は、脱炭素化の大きな波に直面しており、「グリーンスチール」への移行が加速しています。新興国における石炭ベースの製鉄設備増設は、長期的なカーボンロックインのリスクを伴いますが、先進国を中心に水素還元製鉄や電炉(EAF)へのシフトが進んでいます[7]。
この技術革新は、鉄鋼生産のサプライチェーン全体に影響を与え、新たな投資機会と同時に、既存の資産の陳腐化リスクも生み出しています。特に、欧州や北米では、環境規制の強化と消費者意識の高まりが、グリーンスチール製品への需要を喚起し、産業構造の変革をさらに加速させるでしょう。この変化は、鉄鉱石の品質要件や、鉄スクラップの重要性の高まりにも繋がります。
出典:
[1] World Steel Association, worldsteel Short Range Outlook April 2026 (2026年4月14日)
[2] Simply Wall St, Rio Tinto Group (NYSE:RIO) Stock Forecast & Analyst Predictions (2026年6月9日)
[3] Seeking Alpha, Rio Tinto: Downgrading On Valuation, Not Fundamentals (2026年6月2日)
[4] LinkedIn, BHP Firing on Copper, Iron Ore, Potash Fronts in 2026 (2026年5月19日)
[5] OECD, OECD Steel Outlook 2026 (2026年6月4日)
[6] Instagram, Global steel excess capacity could reach 745 million tonnes by 2028 (Unknown)
[7] Nature Climate Change, Averting the steel carbon lock-in through strategic green steel transitions (Unknown)
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