2026年第1四半期、金市場は中央銀行による記録的な購入が継続する一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め観測と実質金利の上昇により、価格は軟調に推移した。地政学的リスクは安全資産としての金の需要を下支えするものの、ドル高と利上げ期待が短期的な上値を抑制している。

中央銀行の金購入が市場を下支え

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の報告によると、2026年第1四半期における中央銀行の金購入量は244トンに達し、これは前四半期および過去5年間の平均を大幅に上回る水準である[1]。特に中国、インド、トルコなど新興国の中央銀行が外貨準備の多様化とドル依存からの脱却(デダラリゼーション)を目的として、金の買い増しを継続している。この堅調な公的部門からの需要は、金価格の下支え要因として機能し、市場のボラティリティを吸収する役割を果たしている。

歴史的に、中央銀行の金購入は地政学的緊張が高まる局面で加速する傾向がある。現在の世界情勢においても、ウクライナ紛争の長期化や中東情勢の不安定化が、各国の中央銀行に安全資産としての金の保有を促していると考えられる。これにより、投資家心理は安定し、金市場全体に一定の安心感をもたらしている。

FRBの金融政策と実質金利の相関

金価格は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策、特に実質金利の動向と強い逆相関関係にある。2026年5月、金価格は1%下落したが、これはFRBによるインフレ抑制のための利上げ継続観測と、それに伴う実質金利の上昇が主な要因である[1]。金は利子を生まない資産であるため、実質金利が上昇すると、債券などの利回り資産と比較して魅力が低下する傾向がある。

しかし、WGCは、FRBがインフレ圧力に対応するために利上げを継続するシナリオにおいても、金が「意外にも利益をもたらす可能性」があると指摘している[1]。これは、利上げが経済成長を鈍化させ、最終的に景気後退リスクを高めることで、再び安全資産としての金への需要が高まるという見方に基づいている。また、ドル指数(DXY)の動向も金価格に影響を与える。ドル高は、ドル建てで取引される金の購入コストを他通貨圏の投資家にとって高めるため、金価格に下落圧力をかける要因となる。

地政学的リスクと安全資産としての金

現在の金市場は、世界的な地政学的リスクの高まりによって、安全資産としての需要が継続的に存在している。ウクライナ紛争の長期化、中東地域における緊張、そして主要国間の貿易摩擦やサプライチェーンの脆弱性といった要因は、投資家の不確実性を高め、有事の際のヘッジとして金への資金流入を促している。特に、ホルムズ海峡のような主要な海上輸送路における混乱の長期化は、原油市場だけでなく、広範なコモディティ市場に影響を及ぼし、結果として金への逃避需要を刺激する可能性がある[1]。

一方で、地政学的リスクは、世界経済の成長見通しを悪化させ、インフレ圧力を高める可能性もある。このような状況下では、金はインフレヘッジとしての役割も果たすため、その需要はさらに高まることが予想される。投資家は、FRBの金融政策と実質金利の動向に加え、これらの地政学的要因が金市場に与える複合的な影響を慎重に評価する必要がある。

出典:[1] World Gold Council, Gold Market Commentary: Hiking up a volcano (2026年6月4日)

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