イーサリアムの次期大型アップグレード「Glamsterdam(グラムステルダム)」のデブネットが2026年5月末に稼働を開始した。本アップグレードは、プロトコルレベルでのブロック構築分離(ePBS)と並列トランザクション処理の導入を軸とし、L1のガスリミットを現在の30M〜60Mから年内に200Mへと大幅に引き上げることを射程に捉えている。これにより、L1単体でのスループットは100 TPSに到達する見込みであり、機関投資家によるステーキングの資本効率とネットワークの検閲耐性が劇的に向上する「制度化」の最終段階へと突入する。

L1ガスリミット200Mへの挑戦:Glamsterdamがもたらすインフラ刷新

2026年5月、イーサリアム財団は次期アップグレード「Glamsterdam」のデブネットが安定稼働に入ったことを公表した。本アップグレードは、2025年のPectra、2026年初頭のFusakaに続くロードマップの重要拠点であり、実行レイヤーの効率化を極限まで追求するものである。特筆すべきは、L1のガスリミットを年内に200Mまで引き上げるという野心的な目標だ。過去4年間、30M付近で停滞していたガスリミットは、直近3ヶ月で60Mへと段階的に引き上げられてきたが、Glamsterdamの導入により、12ヶ月間で約6.7倍という驚異的なスケーリングを実現する軌道に乗っている。

この劇的な拡張を支える技術的支柱の一つが、EIP-7732で定義される「Enshrined Proposer Builder Separation(ePBS)」である。これまでMEV-Boostなどの外部リレーに依存していたブロック構築と提案の分離をプロトコル内部に組み込むことで、バリデーターの負担を軽減しつつ、MEV(最大抽出可能価値)の集中リスクを構造的に排除する。これにより、ネットワークの分散性が維持されたまま、より巨大なブロックの処理が可能となる。オンチェーンデータによれば、2026年5月に入り、このインフラ刷新を見越したクジラ(大口投資家)によるETHの蓄積が加速しており、L1の「利回り密度」向上への期待が市場を牽引している。

並列処理の導入とBALs:ディスクI/Oのボトルネック解消

Glamsterdamのもう一つの核心的機能は、EIP-7928による「Block-Level Access Lists(BALs)」の導入である。イーサリアムの長年の課題であったステートアクセスの遅延に対し、BALsはブロック内のトランザクションが接触するアカウントやストレージスロットを事前に明示することで、ディスク読み取りの並列化を実現する。これにより、バリデーターはトランザクションの検証を複数のスレッドで同時に実行可能となり、計算リソースの利用効率が飛躍的に向上する。従来の直列的な処理構造から脱却し、マルチコアCPUの性能をフルに活用できる環境が整うことで、複雑なスマートコントラクトの実行コストも大幅に低減される見通しだ。

この技術的進歩は、単なる処理速度の向上に留まらず、DeFi(分散型金融)の資本効率を根本から変える可能性を秘めている。例えば、高頻度な価格更新を必要とするオンチェーン・デリバティブや、膨大なステート参照を伴うRWA(現実資産)のトークン化プラットフォームにおいて、ガス代の予測可能性とスループットの安定性は、機関投資家が本格参入するための必須条件である。2026年5月25日のBitcoinFoundationの報告によれば、Glamsterdamの安定性は複数のクライアント構成で確認されており、メインネットへの実装に向けた最終調整が急ピッチで進められている。

機関投資家向けステーキングの「制度化」と今後の展望

GlamsterdamによるL1の強化は、イーサリアムを「世界的な決済・決済レイヤー」として再定義する動きを加速させている。ガスリミットの引き上げは、L2ロールアップからのデータ書き込みコストをさらに抑制し、エコシステム全体の経済圏を拡大させる。同時に、L1自体のスループット向上は、ステーキング報酬の源泉となる優先手数料(Priority Fees)の総量を増加させ、バリデーターの収益性を高める効果がある。これは、利回りを重視する機関投資家にとって、ETHを単なる資産から「利回り生成インフラ」へと昇華させる重要な転換点となる。

今後の焦点は、Glamsterdamのメインネット実装を経て、2027年以降に予定されている「Hegotá(ヘゴタ)」アップグレードへと移る。Hegotáでは、量子耐性の導入やステートレス・クライアントの完全実装が計画されており、イーサリアムは「10,000 TPS」という当初の壮大な目標に向けて着実に歩みを進めている。2026年5月現在の進捗は、かつて「過度に攻撃的」と評されたロードマップが、現実的な技術実装によって裏打ちされていることを証明している。投資家やビジネスリーダーにとって、このインフラの激変は、Web3が「実験」から「社会基盤」へと移行する決定的な瞬間として記憶されるだろう。

出典:BitcoinFoundation (2026/05/25), Ethereum.org (2026/05), Ryan Sean Adams (2026/05/05)

免責事項:本記事は情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
Visuals created using artificial intelligence.