国際エネルギー機関(IEA)は2026年4月8日、レアアース供給網の集中がEV、風力、データセンター、防衛産業の生産計画に影響するとの分析を公表した。中国が2025年4月に7種類の中・重希土類関連品目へ輸出管理を導入したことで、論点は鉱石価格から輸出許認可、精製能力、磁石供給契約へ移っている。
中国の輸出管理は磁石工程を直撃
中国商務部と税関総署は2025年4月4日、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの関連品目に輸出管理を導入した。対象は金属、合金、酸化物、化合物、混合物、一部の永久磁石材料であり、輸出には国務院商務主管部門へのライセンス申請が必要である。
IEAの数値が示す下流産業リスク
IEAによれば、磁石用レアアースの需要は2015年から倍増し、現行政策下では2030年までにさらに3分の1増える。永久磁石はレアアース消費の価値ベースで約95%を占め、中国は2024年時点で磁石用レアアース採掘の60%、精製の91%、焼結永久磁石生産の94%を担う。2005年に約50%だった焼結永久磁石の中国シェアは、2024年に94%へ上昇した。
IEAは、中国の輸出管理が全面実施された場合、中国国外で年間6.5兆ドル相当の下流生産がリスクにさらされると試算した。米国と欧州ではそれぞれ1.5兆ドル超、自動車部門では3兆ドル超が対象となる。これはレアアース市場の取引額ではなく、磁石を使う完成品産業の売上計上時期と稼働率に関わる数値である。
米国統計は採掘増と輸入依存の併存を示す
米地質調査所(USGS)のMineral Commodity Summaries 2026によれば、米国の2025年レアアース鉱物精鉱生産は酸化物換算51,000トン、評価額2億4,000万ドルだった。一方で、レアアース化合物・金属の輸入は2025年に169%増え、純輸入依存度は2024年の53%から2025年に67%へ上昇した。2021〜2024年の輸入元は中国71%、マレーシア13%、日本5%、エストニア5%、その他6%である。
世界生産でも集中は残る。USGSは2025年の世界鉱山生産を390,000トン、中国生産を270,000トンと示した。単純計算の中国シェアは約69%であり、国内採掘を増やしても、分離・精製・合金・磁石化の工程を整えなければ、輸入依存の低下には直結しない。
供給網再設計は精製・磁石投資が焦点
IEAの重要鉱物データでは、銅、リチウム、ニッケル、コバルト、グラファイト、レアアースの上位3精製国の平均市場シェアが2020年の約82%から2024年に86%へ上昇した。さらに、重要鉱物投資は2023年に14%増えた後、2024年は5%増に鈍化し、探鉱活動は2024年に横ばいとなった。供給不安が価格だけで解消しにくい構造が残る。
IEAは、中国以外の需要を分散供給で満たすには、採掘能力を2倍、精製能力を4倍、磁石生産能力を6倍にする必要があるとした。USGSとNASAは2026年5月12日、米西部約400,000平方マイルを対象にした重要鉱物の空中ハイパースペクトル調査成果を公表したが、資源把握は前提にすぎない。2030年までの焦点は、鉱山権益よりも精製・磁石工程への公的金融、長期購入契約、認証期間の短縮である。
出典:IEA Rare Earth Elements (2026年4月8日), IEA Critical Minerals, 中国商務部 Announcement No.18 of 2025 (2025年4月4日), USGS Mineral Commodity Summaries 2026: Rare Earths, USGS・NASA (2026年5月12日)
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