JLLが5月5日に公表した調査によると、2026年第1四半期の世界直接不動産取引額は2,160億ドルとなり、前年同期比18%増加した。公開REIT市場でもNareit集計の全エクイティREIT総リターンは2026年2月時点で年初来10.5%となり、不動産資本市場は金利高止まり下で回復局面に入った。
回復の中核は、物件価格の調整後に資本が再配分されている点にある。JLLによると、アジア太平洋の投資額は前年同期比31%増、米州は25%増、EMEAは2%減であり、クロスボーダー投資は550億ドルと37%増加した。地域差はあるものの、2022年以降に低下した流動性が、信用市場の改善と価格安定を背景に戻りつつある。
REIT反発は金利低下ではなくインカム再評価が支える
Nareitの四半期データでは、2月時点のFTSE EPRA Nareit Developed Indexは年初来11.2%上昇し、全エクイティREITの配当利回りは3.7%、モーゲージREITは12.1%であった。価格上昇の背景は、金利低下期待のみに依存しない。CBREは2026年の米商業不動産投資活動を前年比16%増の5,620億ドルと見込み、キャップレートは多くの物件タイプで5〜15bpの低下にとどまると予測している。利回り低下幅が限定される局面では、賃料収入、稼働率、借入コストの管理がリターン差を決める。
| 指標 | 最新値 | 含意 |
|---|---|---|
| 世界直接不動産取引額 | 2,160億ドル、前年比18%増 | 流動性の回復 |
| 全エクイティREIT総リターン | 年初来10.5% | 公開市場の先行反発 |
| 米実質GDP | 2026年第1四半期、年率2.0%増 | 需要下支え |
| 米CPI | 2026年4月、前年比3.8%増 | 利下げ余地の制限 |
インフレ再加速が不動産サイクルの上限を定める
米国経済は2026年第1四半期に実質GDP年率2.0%増となり、2025年第4四半期の0.5%増から伸び率を高めた。一方でBEAのPCE価格指数は4.5%、食品・エネルギーを除くPCEは4.3%となった。BLSが5月12日に発表した4月CPIは前年比3.8%増、エネルギーは17.9%増であり、FRBは4月29日のFOMCでFF金利の誘導目標を3.50〜3.75%に据え置いた。インフレ率が2%目標を上回る限り、借入コストの低下による評価倍率の再拡大は限定される。
住宅市場も同じ制約を受けている。米商務省センサス局によると、2026年4月の住宅着工は年率146.5万戸で前月比2.8%減、建設許可は144.2万戸で前月比5.8%増となった。単月では供給計画が持ち直したが、単戸建て着工は前月比9.0%減であり、住宅ローン金利と建設費の水準が開発判断を抑制している。商業不動産ではオフィスの新規供給減少、物流施設の仕様高度化、データセンターの電力制約が、同じ資本コスト環境の中で物件選別を強める。
欧州とデータセンターが資本配分の分岐点になる
CBREの欧州市場見通しは、長期金利が高止まりし、利回り低下によるリターン拡大が限定されるとする。そのため、欧州では住宅系、学生住宅、データセンターなど供給不足が明確なセクターに資金が集まっている。AI需要はデータセンター空室率を押し下げる一方、電力接続期間と電力価格を新たな制約にしており、エネルギー価格の変動はREITの運営費とテナント賃料の双方に波及する。
取引額は回復しているが、問題はその中身だ。賃料成長と資金調達条件の改善が伴わなければ、数字は伸びても実質的な回復とは言えない。米インフレ率が3%台に残る場合、REITと私募不動産の価格差は縮小しても、回復の中心はレバレッジ拡大ではなく、インカム耐性と供給制約を持つ資産に絞られる。
出典:JLL (2026年5月5日), Nareit (2026年), BEA (2026年4月30日), BLS (2026年5月12日), Federal Reserve (2026年4月29日), U.S. Census Bureau (2026年5月21日), CBRE (2026年1月14日), CBRE Europe (2026年1月13日)
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