欧州委員会は5月29日、中国との貿易・投資関係を「持続不可能」と位置付け、対中政策を産業保護と経済安全保障の軸で再検討した。EUはデカップリングではなくデリスキングを維持すると説明するが、対中赤字と中国製品の流入増が、供給網の再設計を企業に迫っている。

背景には、EUの対中依存が輸入側で数値として拡大している事実がある。Eurostatによると、2025年のEUの対中輸出は1996億ユーロ、輸入は5594億ユーロで、財貿易赤字は3598億ユーロだった。2024年比では輸出が6.5%減少し、輸入が6.4%増加した。2026年第1四半期の対中財貿易赤字は980億ユーロとなり、2022年第3四半期の1070億ユーロ以来の水準に近づいた。

EUの対中デリスキングは産業保護へ重心を移す

欧州委員会の公式リードアウトは、基本方針を「デリスキングであってデカップリングではない」と明記した。同時に、現在の貿易・投資関係を持続不可能とし、経済と安全保障の利害が結び付くなかで、より一貫した対応が必要だとした。EUはもはや中国市場との接続を断とうとしているわけではない。輸入集中、補助金、過剰生産、戦略物資の依存を個別に制御する段階へ移った。

Reutersは、米国の対中関税が中国の輸出先を変化させている可能性を報じた。中国の対米輸出が前年比29%減少した一方、対EU輸出は14.8%増加したとされ、米中摩擦の副作用がEU域内産業に転嫁される構図である。Eurostatの品目別統計でも、2025年の対中輸入は電気機器・音響映像機器などが1649億ユーロで全体の29.5%、機械・機械部品が1065億ユーロで19.0%を占めた。EU企業は調達コストの低さを取るか、産業基盤の空洞化リスクを避けるか——その二択を迫られる局面だ。

対中防衛策は報復リスクと域内利害の調整を伴う

EUが通商防衛措置を強める場合、対象はEV、電池、鉄鋼、化学、機械など、脱炭素投資と製造業雇用に関係する分野に広がる可能性がある。欧州委員会は6月のG7と欧州理事会に議論を接続する方針であり、関税、公共調達条件、輸入監視、投資審査を組み合わせる制度設計が次の焦点となる。これは米国型の一括関税ではなく、産業別にリスクを測定する欧州型の防御策に近い。

一方で、中国側はEUの制限措置に反発している。中国外務省の毛寧報道官は、China-EU trade relations are win-win in nature と述べ、中国は貿易黒字を目的としていないと主張したと報じられた。EV関税後には、EU産豚肉、ブランデー、乳製品をめぐる調査や措置が相次いでおり、対中防衛策は欧州企業の輸出機会にも影響する。ドイツの自動車、フランスの農産・酒類、北欧の産業機械など、加盟国ごとの対中利害は一致しない。

EUの選択肢は、対中依存を短期で遮断することではなく、輸入集中を数値で管理し、重要部材の調達先を複線化することにある。6月のG7と欧州理事会で、EUがどの産業を戦略部門に指定し、どの防衛措置を制度化するかが、2026年後半の企業の調達・投資判断を左右する。

出典:European Commission (2026年5月29日), Reuters (2026年5月29日), Eurostat (2026年4月10日), Eurostat Statistics Explained (2026年5月)

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