世界の商業用不動産市場は2026年第1四半期、金利据え置きと供給制約を背景に取引回復を示した。JLLによると、世界の直接不動産取引額は2,160億ドルとなり、前年同期比18%増加した。

回復の中身は、資本コストの安定、開発供給の制約、テナント需要の鈍化——この三つが同時に動いている。取引額の伸びだけを見ても、市場の輪郭は掴みにくい。米連邦準備制度理事会は4月29日、FF金利の目標レンジを3.50〜3.75%に据え置き、欧州中央銀行も4月30日に預金ファシリティ金利を2.00%で維持した。中東情勢に伴うエネルギー価格上昇はインフレ再燃リスクとして残るが、金融政策が追加引き締めに直ちに傾かない環境は、不動産の価格発見を進める条件になっている。

クロスボーダー資金は550億ドルに回復

JLLの集計では、地域別の直接投資額はアジア太平洋が前年同期比31%増、米州が25%増、EMEAが2%減であった。クロスボーダー投資は550億ドル、前年同期比37%増となり、第1四半期としては2022年以来の水準に戻した。資金流入の配分はEMEAが40%、米州とアジア太平洋が各30%。一地域への偏りは小さく、クロスボーダー資本は三極に分散している。

セクター別では、オフィスと物流の論点が対照的である。世界のオフィス賃貸需要は前年同期比1%減となり、2025年までの9四半期連続成長は止まった。一方で、米国のオフィス建設パイプラインは過去最低水準にあり、残存パイプラインの3分の2超はプレリース済みである。需要の停滞と新規供給の減少が同時に進むため、立地と築年数による価格差は拡大しやすい。

REIT市場は資金調達減とM&A増が併存

Nareitによると、2026年第1四半期のREIT資本調達額は約100億ドルで、2025年同期の122億ドルから22億ドル減少した。内訳は債券63億ドル、普通株24億ドル、優先株3.4億ドルで、債券が全体の63%を占めた。ただし、無担保債の平均クーポンは4.7%と、2025年の5.4%を下回っており、資金調達量の減少と借入条件の改善が同時に起きている。

M&Aは逆方向の動きを示した。2026年第1四半期に発表された上場REIT買収は5件、総取引価値は261億ドルで、2025年通年の完了額144億ドルを上回った。上場REITの株価と不動産純資産価値の差が残る局面では、公開市場で割安に評価された資産を買収する取引が増えやすい。第1四半期のM&A総額261億ドルは、個別銘柄の話というより、資本市場が不動産価格の再評価を進めているサインだ。

小売不動産は郊外と都心で需給差

CBREの米国小売データでは、2026年第1四半期の平均募集賃料は1平方フィート24.59ドルで、前年同期比2.4%上昇した。小売の利用可能率は4.9%で、2022年以降、都心部は120ベーシスポイント上昇した一方、郊外は91ベーシスポイント低下した。ハイブリッド勤務が消費立地を変え、住宅地近接型の店舗需要を支えている。

当面いちばん効く変数は、供給制約が賃料とキャップレートのどちらに先に効くかだ。金利は据え置きが続けば価格発見は進むが、中東情勢に伴うエネルギー高が建設費・運営費に乗れば、回復の質は地域・資産タイプで分かれる。2026年の不動産市場は、取引量の回復を装いながら、オフィスと物流、都心と郊外、債券調達とM&A——資産タイプと地域ごとに資本の行き先が試されている。

出典:JLL Global Real Estate Perspective (2026年5月5日), Nareit Market Commentary (2026年4月20日), CBRE U.S. Retail Figures (2026年4月29日), Federal Reserve FOMC Statement (2026年4月29日), ECB Monetary Policy Decisions (2026年4月30日)

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