中東紛争がホルムズ海峡の原油輸送を麻痺させ、史上最大の供給危機に発展しています。原油価格は1バレル100ドルに迫る一方、安全資産需要で強まるドルが金の重石となる展開です。インフレ再燃懸念から米国の利下げ観測は後退し、世界経済の不確実性が一層高まっています。
ホルムズ海峡封鎖、史上最悪の供給途絶
国際エネルギー機関(IEA)が2026年3月12日に発表した月次報告によると、中東での軍事衝突の激化により、世界の石油市場は歴史上例のない規模の供給障害に直面しています [1]。紛争前には日量約2,000万バレルが通過していたホルムズ海峡の交通がほぼ完全に途絶。これにより、サウジアラビアをはじめとする湾岸産油国は、日量少なくとも1,000万バレルの生産削減を余儀なくされました。
この供給ショックを受け、ブレント原油価格は紛争勃発前の水準から20ドル以上急騰し、1バレル92ドル台で推移しています。ゴールドマン・サックスは3月11日のレポートで、3月から4月にかけての平均価格を98ドルと予測しており、ホルムズ海峡の封鎖が1ヶ月続いた場合、110ドルに達するとのリスクシナリオも提示しました [2]。JPモルガンは、「市場は純粋な地政学リスクの価格付けから、実際の操業混乱への対処に移行している」と分析しており、事態の深刻さがうかがえます [3]。
ドル独歩高とFRBのジレンマ
市場の混乱は、為替市場と金融政策にも大きな影響を及ぼしています。地政学リスクの高まりを背景に、安全資産とされる米ドルへの資金逃避が加速。米ドル指数(DXY)は2026年に入って初めて心理的節目の100を突破し、年初来高値を更新しました [4]。
このドル独歩高が、伝統的な安全資産である金の価格の重石となっています。金価格は一時、史上最高値を更新する場面もありましたが、その後はドル高に押され、1トロイオンス5,100ドル台での取引が続いています。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、2025年の金採掘量は過去最高を記録したものの、2026年は多くの鉱山会社が生産減少を見込んでおり、供給面からの価格サポートも限定的とみられています [5]。
さらに、原油価格の高騰はインフレ再燃への懸念を強め、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策運営を複雑にしています。ゴールドマン・サックスは、インフレ圧力の高まりを受け、FRBによる最初の利下げ開始時期の予測を従来の6月から9月へと後退させました [2]。市場では、年内の利下げは2回にとどまるとの見方が広がりつつあり、金融引き締め環境の長期化が世界経済のさらなる下押し圧力となる可能性があります [6]。
スタグフレーションの足音
今回の供給ショックは、単なるエネルギー価格の上昇にとどまらず、世界経済全体に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。Al Jazeeraは、特に海上貿易に依存する発展途上国が深刻な経済的困難に直面するリスクを報じています [3]。米国でもガソリン価格が前週から1ガロンあたり0.43ドル上昇するなど、消費者への影響がすでに出始めており、個人消費の冷え込みが懸念されます。
原油価格の高騰がインフレを加速させる一方で、経済活動は停滞するという「スタグフレーション」への警戒感が市場で急速に高まっています。ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、そのリスクは現実のものとなり、資産運用戦略の根本的な見直しを迫られることになるでしょう。
出典: [1] IEA, “Oil Market Report – March 2026” (2026年3月12日) [2] Goldman Sachs, “Iran and the US Economy” (2026年3月11日) [3] Al Jazeera, “Iran war threatens prolonged impact on energy markets as oil prices rise” (2026年3月8日) [4] ActionForex, “US Dollar Index (DXY) Rises Above the 100 Level” (2026年3月13日) [5] World Gold Council, “You asked, we answered: Are we running out of gold?” (2026年3月12日) [6] CNBC, “Markets’ hopes for Fed interest rate cuts are rapidly fading away” (2026年3月12日)
免責事項: 本記事は情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。最終的な投資判断は必ずご自身で行ってください。 サムネイル:AI生成画像